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PRODUCTION NOTES

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全てを注ぎ込んだスパイアクション

全てを注ぎ込んだスパイアクション

『キングスマン』は、紳士スパイが労働者階級の若者を指導して一人前のスパイに育てるというストーリーで、スパイ・ジャンルの既製概念を皮肉っぽく覆してみせる。これは生死を賭けた諜報活動と庶民の生活という2つの相反する世界を舞台に、ストリートで生き抜く知恵をつけた少年が社会の階級を一段上へ昇る物語だ。「本作には、ギャングが登場する『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や『スナッチ』、『レイヤー・ケーキ』と、グラフィック・ノベルが原作の映画『キック・アス』と『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』を製作したことで私が学んだすべてを投入した」監督で共同脚本もつとめたマシュー・ヴォーンが語る。

共同脚本のジェーン・ゴールドマンが付け加える。「マシューはスパイ映画を心から愛しているわ。『キングスマン』はスパイ映画というジャンルを利用しながら、新しいことを試みている作品よ。マシューは何年も前に『スターダスト』に取り組んでいた時からすでにスパイ映画を作りたいと言っていたの。」ヴォーンとグラフィック・ノベル作家として有名なマーク・ミラーが、『キングスマン』の元となるアイディアを考えついたのは、一つのジャンルに収まりきらない映画、『キック・アス』を撮影している時だった。「エリート・スパイの起源を探求しつつ、まったくスパイとは縁のなさそうな候補者に焦点を当ててみたいと思った」とミラーが語る。

ミラーはある新聞記事について、ヴォーンに話した。その記事は、ジェームズ・ボンド映画の第1作『007/ドクター・ノオ』を監督したテレンス・ヤングが007の原作者であるイアン・フレミングの反対を押し切って、どうやってショーン・コネリーを起用したかを取り上げたものだった。フレミングが考えていたボンド役は、ジェームズ・メイソンやデヴィッド・ニーヴンのようなタイプだった。ミラーが言う。「ヤング監督は、エジンバラ出身のコネリーを紳士に仕立てなければならないことに気づき、撮影を始める前に、コネリーを自分が通っている紳士服の店やひいきにしているレストランへ連れて行き、食事の作法から、話し方、紳士的なスパイとしての着こなしまで徹底的に教えこんだんだ。」この話がきっかけとなって、『キングスマン』を製作する話は始まったが、ミラーがグラフィックノベルの『キングスマン: ザ・シークレット・サービス』―映画はこれに基づいている―を書いたのは、それからまだ数年あとのことだった。二人はアメリカを舞台にしたアイディアを検討したが、ヴォーンは舞台をイギリスにしたいと主張した。

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映画化を必ず成功させる最強コンビ

映画化を必ず成功させる最強コンビ

グラフィック・ノベルの「キングスマン:ザ・シークレット・サービス」は、2012年2月、コミックブック店の棚に並んだ。このストーリーでは、紳士的なスパイがイギリス文化の相対する2面性を探求しつつ、青二才の甥っ子を次世代の一流秘密捜査員に育てあげる。

一方、ヴォーンは共同ライターのジェーン・ゴールドマンと共に映画バージョンのためのアイディアをふくらませていた。2人はこれまでに作られたヴォーンの全作で協力しており、ミラーがコミックを作成している間に新しい台本を執筆した。この台本は、ミラーの進行中の作品「キック・アス」の映画化の時とほとんど同じ取り組み方をした。

「マシューとジェーンの協力関係はすばらしい」とミラーは言う。「どんな仕事だろうと、2人が取り組むといつでもより良いものになる。自分の本が脚色され、想像した以上の作品になることほどうれしいことはない。」

ヴォーンとゴールドマンは、ミラーのストーリーを多少変えて、『キングスマン』を少し違った方向に持っていきたいと考えた。二人はこの組織の経歴を考え、政府色を少し薄め、紳士スパイを少年の叔父ではなく、若者の父親に命を救われた元同僚に変えた。

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紳士的アクション・ヒーローの誕生

紳士的アクション・ヒーローの誕生

キングスマンは政府の外で仕事をするエリート・スパイの組織で、軍スタイルで仕事をこなす利他主義な機関だ。「彼らは良い人たちだ」とハリー役のコリン・ファースが言う。ハリーはキングスマンの中では、ガラハッドというアーサー王の伝説に出てくる騎士の名前で呼ばれている。「今の時代、人々は自国の組織や政府に疑いを抱いている。かつてはあった信頼が損なわれた今、純粋な動機を持った組織が存在するというアイディアを探求するのは面白いことだ。これは国家機関の政治や官僚主義に妥協しない集団だ。キングスマンはいわば、現代版の円卓の騎士なんだ。」

ファースの起用は、ヴォーンにとっては簡単な選択だった。ファースは独特の英国人紳士として絶大な人気と賞賛を手にしている人だったから、彼の格好いい一面を見せるという考えに迷うことなく飛びついたのだ。「コリンがアクションをやるところは見ていて楽しいし、おもしろい」とヴォーンは言う。「これは大きな賭けだったが、コリンは見事にやってのけた。彼ならスパイの紳士的な面を簡単に見せられることは分かっていたが、アクションをこなせるかどうかについては確信がなかった。安全地帯の外に連れ出すことになったが、彼は非常に頑張ってくれた。今後は、間違いなく、コリンはアクション・スターとして活躍するだろう。」

紳士的なスパイというのは、ジョン・ル・カレの小説に登場する孤独な探偵から、1960年代のジェームズ・ボンド映画で描かれたハイテクを使いこなし、男らしさを前面に押し出したスパイまでイギリス映画の代名詞だ。『裏切りのサーカス』でル・カレが生み出したビル・ヘイドンを演じたファースは、本作でアクションヒーローを演じるチャンスを喜んだ。

「『キングスマン』のパレットと感受性にはどこか古めかしい感じがする。たとえば、紳士的なスパイ」ファースが語る。「それにエレガントなスタイル。カフスボタンにスーツ、傘に組み込まれたガジェットと。未来的なところもあるし、かなり突飛なやり方で、ありそうもない話をありそうに見せてしまう。」実際この役は、遊び場で空想を楽しんでいた8歳の時に彼がやりたいと思ったような役だった。「この映画には、何でも完ぺきにこなすヒーローや悪役が登場する。それに迫力のある激しいアクションや並外れた空想の要素がある。超人的なパワーも存在する。我々は空を飛べるような人間ではないが、ライターやペン、靴に隠したナイフなど、不可能なことをやれるガジェットを駆使しているからだ。」

ハリーはエグジーの父の死に責任を感じ、恩も感じている。捜査官が一人殺されたために、キングスマンは新人を募集する。ファースが説明する。「ハリーは、亡くなった同僚の息子のエグジーが悲惨な末路に向っているのを見て、彼を救おうと立ち上がる。罪の意識もあるが、エグジーをキングスマンにふさわしい人間に変えられるかどうか、その結果を見てみたい気持ちもある。紳士は言葉のアクセントや育ちとは関係ないと、彼は断言する。人は、学び、行動で示すことによって紳士になると言うんだ。」

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運命の映画初出演

運命の映画初出演

道に迷った青年から一流のスパイになるまでを見せるエグジー役を選ぶのは、大きなチャレンジだった。プリ・プロダクション段階に入り、ほとんどの役が決まったあとでも、ヴォーンはまだエグシーを演じる若い俳優を探していた。

60人以上の若手俳優のスクリーンテストを終えたあとで、監督はタロン・エガートンに会った。彼はウェールズ西部のアベリストウィス出身の24歳で、演劇学校を卒業したばかりだった。映画出演の経験がなかったエガートンはテレビドラマに取り組んでいた時、エージェントから『キングスマン』の台本の数ページをもらい、翌日受けるオーディションの準備をするようにと言われた。「あの時点では映画のタイトルさえ知らなかったと思うよ」エガートンが言う。「演じたのは、ハリーとエグジーという名前のキャラクターが登場するシーンだった。とても面白い話で、オーディションというチャンスに心が躍った。」

そのオーディションの場で、エガートンは、今度はコリン・ファースと一緒に本読みをしてもらいたいとヴォーンに言われた。エガートンは、ファースがハリー役に起用されていたことをまだ知らなかった。「5分もしないうちに、マイケル・ケインが出演することも知って、心臓がバクバク音を立て始めた」当時の状況を思い出してエガートンが語る。

「才能のある若手俳優を見つけるのは大変だ」ヴォーンが言う。「作品を背負えるような人を見つけるとなると、さらに難しい。タロンは一度も映画出演の経験はないが、世の中には何か特別な感じを受ける人はいるものだ。ジェニファー・ローレンスが『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』でミスティーク役を演じたのはまだ19歳の時だったが、カメラで彼女を撮影した瞬間彼女には何か特別なものがあると分かった。タロンも同じだったよ。」

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教会で何が起こったか

教会で何が起こったか

オーストラリア人の武術家でアクション振付師のブラッド・アランは、『キック・アス』でヴォーンと協力した経験があり、パルクール競技の優勝者やアランがYoutubeで見つけたブレイクダンサーのいるチームと共に、ファイト・シークエンスを構成した。

多くの目を引くアクション・シークエンスの一つに、教会を舞台にしたクライマックスとなる戦いがある。ここで、ファースは会衆全員をやっつける。信じられないことだが、このシーンはワンテイクで撮影された。

スタントの多くがファースにとって初めての経験だったが、彼が演じたキャラクターは爆発的な動きと物思いに沈んだ静けさを使い分ける。ハリーは一度アクションを始めると止められなくなるが、それでも洗練された物腰を維持し続ける。「最初は‘とてもきちんとした’戦いの世界だ」とファースが説明する。「その後で大混乱になり‘きちんと’とは程遠い状態になる。」

教会シーンの準備のため、一流のスタント・チームが起用された。ファースは彼らを、「並外れた紳士連盟」と呼ぶ。「彼らはそれぞれすばらしいスキルの持ち主だ。世界でも最高の武術家の一人、ブラッド・アランが率いるジャッキー・チェンのようなトレーニング・チーム、それに、ワールド・チャンピオンとして6度優勝したタイ・ボクサーやオリンピックでゴールド・メダリストとなった体操選手、銃のトレーニングのために元特殊部隊の隊員までいた。私は何が起きたのか分からなかったよ。」

ファースは毎日、3時間のトレーニングを数週間続けた。「今まで一度も使ったことのない体の一部を使う方法を学んだ」と彼が言う。「そんな部分があることさえ知らなかった。あれは辛い経験だった。」

「コリンのトレーニングをしたスタントマンたちはとても感激していたわ」ジェーン・ゴールドマンが語る。「彼が今までやってきたこととは違うタイプのことだったけれど、トレーニングには几帳面に真面目に取り組んでいた。コリンは誰よりも一生懸命に頑張っていたの。そうしなければならないからではなく、彼自身がそうしたいと思ったからよ。彼は見事にやり遂げて、アクションはほとんどスタンドマンなしでこなしたわ。」

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